夜、小田原駅に着いた。

箱根へ向かう前に立ち寄った場所だけれど、
この夜の記憶は、旅の中でも特に強く残っている。
チェックインの時間まで、まだ少し余裕があった。
気づけば、夜の街を歩いていた。
小田原城が近いことは知っていたけれど、
観光するつもりはなかった。
それでも、
「少しだけ見てみようか」と思って歩き出したのは、
人の気配がほとんどなかったからだと思う。
夜の小田原城は、想像していたよりずっと静かだった。
風が強くて、街の音が押し流されているみたいに、周りには人の気配がない。
少し歩いた先で、ふっと視界が開けて、
白い城が、暗い空に浮かび上がっていた。
ライトに照らされた壁はまぶしいくらいなのに、
背景の空は、吸い込まれるように深い紺色。
上のほうでは、松の枝が影になって、
まるで夜がそっと額縁を作っているみたいだった。

近くで細部を見なくてもいい。
遠目だからこそ、
“城がそこにある”という事実だけが、まっすぐ残る。
風は冷たくて、髪が乱れて、
上着の中にまで入り込んでくるのに、
不思議と怖さはなかった。
むしろ、
誰もいない夜に、城だけが光っているその感じが、
観光というより、少しだけ儀式みたいで。
旅のはじまりがこんな夜になるとは思わなかったけれど、
この静けさと強い風は、
「今回は、いつもと少し違う旅になる」って、ちゃんと教えてくれた。
しばらく歩いて、
写真を一枚だけ撮って、
それ以上は、留まらなかった。
名残惜しいというより、
ここまでで十分だと思えたから。
このあと、ホテルへ向かって、
夜を静かに終える。
箱根の旅は、
にぎやかさではなく、
静かな違和感と一緒に始まった。
この夜の空気は、写真だけじゃ足りなくて。
風の音と、白い城の静けさを、短い動画にも残しました。
よかったらYouTubeで、もう少しだけ一緒に歩いてください。
今日も一息、どうぞ。
— siro

